2022年12月に退職し休業、そして2024年2月廃業 それまでの経歴
兄との合流
ぼくは東京にある東京電機大学 電気通信工学部を卒業して、名古屋のインターホンメーカー アイホンに入社し、購買〜生産管理部門を経て電算室(当時はそういう部署の名前でした)に入りシステムエンジニアとして働いていました。そして購買部門時代で部下だった女性と結婚し、家族もできて順風満帆の暮らしをしていました。
一方3つ年上の兄は、東京にある法政大学 工学部を卒業し、東京ドームを作った、テント・建設設備会社の太陽工業入社し、その後トヨタ系の試作品製作会社に移り、祖父から受け継いだ父が営む紡績業の跡継ぎになりました。
しかし急激な構造不況におちいり、業績がみるみる落ち込んでいきました。このままでは行き詰まると思ったのでしょう。なんとかしたいと、その右腕にとぼくを誘いました。
もちろん迷いましたが兄と父を助けたいとの思いで決心しました。ところがぼくが入った後は、いろいろ努力したけれど、むしろどんどん業績が悪くなり廃業寸前まで……。時代の大きな趨勢には抗えないと思いました。
新規事業を始める
だからと言って諦めるわけはありません。その後は新規事業として商品倉庫を改築し、テント・シートの製造販売部門を作りました。いわゆる縫製業です。工場や街のテントシートやトラックの幌、そして車のシートカバーまでいろんな物を作りました。
そんなことをやりながら、ある日二人の趣味だったオートキャンプで、1BOXカーの横につけるカーサイドタープを作ったのですが、これがじつに画期的なものだったのです。
アウトドア業界へ、さらに手作りキットの会社へ
これをきっかけに当時ブームだったアウトドア業界に進んでいきました。そして1992年にこのカーサイドタープでアウベルクラフトを創設しました。
その後、趣味で始めたダンボールで燻製作りを楽しむスモークキットをイベントで販売すると爆発的に売れました。これをきっかけに手作りキットの部門も創設しました。とても面白い会社になったのです。
以降は豆腐作り、燻製作り、コーヒー焙煎、そしてアウトドア用タープ、トートバッグ、クラフトキット、さらには囲炉裏、石窯、露天風呂キットなど様々な手作りキットを作ってきました。
事業拡大の道を進むかどうか?の分かれ道
いろんな商品を開発していくと、それがマスコミに広がり、面白い会社があると◯ePalなど多くの媒体に紹介され、◯◯ハンズなど多くの販売店、そして大手通販会社でも引っ張りだこでした。呼ばれて全国のあちこちの会社を飛び回りました。テレビ番組でも紹介されるようになったので、東京のスタジオに何度も足を運びました。
ところが、忙しいだけで充実感がないし、第一楽しくないと感じていました。こんなことずっと続けていいのかと思ったのです。そこでここから先は大きな会社にすべきか、それとも小さくてもいいから、自分たちがやりたい会社にすべきか、それを決断するときがきました。
事業の大転換点
そして、ぼくたちは大きな会社にするより、思う存分自分たちがやりたいことをできる会社にしたいと思ったので、全ての取引を中止してネットでのユーザー直販に切り替えました。たぶん「何で?」と思われるかと思いますが、迷いなくそれを選びました。
当然ですが、売上は激減したのですが、自社のネット販売は好調でした。当時はあの◯天にも出店していましたが、その考え方に反発を感じて解約しましたが正解でした。その後は順調に業績ものび、とても楽しい会社運営ができました。方針転換して本当に良かったと思いました。
やむなく廃業へ
そしてぼくたち兄弟の年齢を考えると、会社の今後を考えて後継者を育てることを数年かけてやってきました。
会社の業績は順調だし、この先も明るいと思いましたが、会社を継続するということは甘くはない。とにかく僕たちの意思とノウハウをどう引き継ぐかが最大のテーマでした。
しかし残念ながらいろいろ努力しましたが、すべてのノウハウの細かいことまでは、やはり僕たち柴田bros.以外の人間では無理だとわかったのです。
それはなぜかというと、売ることはできるかもしれないですが、むしろその後のフォローの方が重要だと思っていたからです。
「売れればいい」、もしそう思っていたら、多分そのまま続けて行ったと思います、業績も伸びたと思います。でもそうは思いませんでした。
ぼくたちは「モノ」を売っているのではない。もっと大切なもの「コト」つまり何かをすることの楽しみです。それは手助けが必要なのです。
もし、それができないなら続けるべきではないなと思いました。そこで決断しました。残念ですが廃業への道を進むことにしたのです。
なんで、そこまでと思う人もいるでしょうね。でもぼくはその先の困っている人たちの姿が見えました。それが決断した理由です。
その後2016年からは会社の規模を大幅に縮小し、兄弟だけで週休3日にして、のんびりと運営していました。そして2022年末に休業、今年2024年2月廃業解散することになりました。
このことで実感したのは、会社を作ることより、廃業することの方がいかに大変かということです。ただ唯一コーヒー焙煎キットだけは、とても価値がある商品で残したいと思っていたので、知人の会社に引き継ぐことができてよかったです。
引退後はのんびり自分の暮らしを楽しんでいます。そしていつか小さくても楽しく過ごせる「コミュニティ・カフェ」を開きたいという夢がありますが、どうなるかな。
こんなふうにいろんなことがあったけど、面白い会社を作ることができて、たくさんのことを楽しめたのは本当に幸せだったと思います。そして応援してくださった多くの人たちに感謝、感謝!