ぼくの予定では昨日の12月20日で最後の仕事を終えるハズだった。ところが今日もまだこんなに出荷待ちが残っている。すごいことだよなあって思う。
12月という年末をリタイヤの時期にしたのは、一番ヒマな時期にすれば、静かにひっそり音を立てずにというか、お客さんに迷惑をかけないだろうという理由だった。
ところが、そのことを知ったお客さんたちから、もの凄く多くの注文が殺到した。それも半年か1年分はあるだろうというまとめ買いだ。これはまったく想像だにしなかったことだった。しかも多くの人から暖かいメッセージまでもらえる。
ぼくはそれが嬉しくて、梱包作業をしながら一人ひとりの名前を読み上げ「〇〇さん、ありがとう!」と感謝の気持ちを言葉にした。本当に感謝感謝!
その量がいったいどれくらいなのか、これを見てもらえれば一目瞭然だと思う。段ボールの山がだんだん高くなっていって崩れても、片付ける余裕さえない。
そして「ぜったい腰や肩を痛めたりするなよ!」と自分に言い聞かせながらの作業だった。怪我をしたら終わりだからね。「あと、ちょっとだ、りゅうちゃんがんばれ〜!」と笑いながら自分を激励する。他に誰もいないから、ほんと笑えるよ。
それでも、いいことはある。
かれこれ7,8年は通ってくれたお客さんが、感謝の気持ちですとチョコのプレゼントをもってきてくれた。たぶん彼にとって、ここに来ていろんな話をすることが息抜きだったんだろう。いや、それはぼくとて同じ。とても残念がって、お互いの目が潤む。
そして家に帰ると、毎日かみさんと1粒ずつ感謝しながらいただく。しみじみ「おいしいねえ〜♪」と笑顔になるのだ。
最終日にはコーヒー焙煎キットの「木のつまみ」を作ってくれている「風の音」の伊藤さんが、最後の挨拶ですと言って会いに来てくれた。
そしてこの小さな「コンパハリート」というオリジナルの木製オカリナをプレゼントしてくれた。吹いてみるととても良い音色がする。
伊藤さんとは30年の長いお付き合いだ。ラジオで伊藤さんがケーナを作っていることを知って、ぼくから連絡した。お互いに好きなことをやり続け、いろんな活動をしてきた。尊敬しあえる素晴らしい人だ。いつかまた会える日がくるだろう。
伊藤さんにもらったのは、これ以外にもミニケーナやいろんな形のオカリナがある。新しいものができると、必ずこんなのができましたと持ってきてくれた。これまで何本もらっただろうか。また一つ宝物が増えた。
そして、今日は珈琲工房しいの木さんご夫婦が、引き継ぎのためにわざわざ常滑から来てくれた。ぼくの大好きな「ゆかり」もいただいた。
しいの木さんには、コーヒー焙煎キットを引き継いで販売していただくことになった。ぼくは、大切なのはこの商品を残すというより、アウベルクラフトの考え方を引き継いでもらうことだと伝えた。
簡単にいうと、アウベルクラフトの存在価値は、ぼくたちが作る商品で「新しいマーケット」をつくることだった。
例えば30年ほど前は、コーヒーを焙煎することは、ごく一部のマニアのものだった。だから発売した頃はみんなからバカにされた。「だれがこんな面倒なことをするの? 売れるわけないじゃないか」と……。
でも、ぼくはいつか家庭で気楽にコーヒーの焙煎を楽しみながら、コーヒーを楽しむという文化は、この商品によって必ず広がっていく。そう信じていた。時間はかかったけど実際にそうなっている。
しいの木さんは、コーヒー焙煎キットの初期のユーザーで、それが高じてプロのコーヒー焙煎の工房を立ち上げた人だ。だからその長いお付き合いでアウベルクラフトのこともよく理解してくれている、
そして、しいの木さんには、これからはもっと多くの人に、その楽しみを知ってもらえるような、新しい視点での活動を広げていって欲しいと伝え。そのことをちゃんと理解してもらえたのが嬉しかった。
さて、12月27日最後の日まで、まだまだたくさんの残務が残っているけど、それが終わったら、たぶんぼくの背中には羽が生えて、空を飛んでいくだろう。そのせいだろうか、最近なんだか背中がモゾモゾしてきたぞ〜。