ピアノ音源「グルグル迷路 奮闘記」の始まり
私は来週70歳になるおじいさんだ。とはいえ気持ちはまだまだ若いしすこぶる元気だ。つまり年齢というのは戸籍上のもので、精神年齢ぢゃないということなのだ。
さて、そのおじさんが「MFC(Marvel's Funny Company)」というワンマンバンドの活動を始めてからもうすぐ2ヶ月になる。
この間機材やソフトを揃え、少しずつ環境を整えてきたのだが、そのたびに壁にぶちあたったもののなんとか乗り越えてきた。
今回も「SYNCHRON FAZIOLI F308」というホレボレするような音源に出会って、これを使えるようにしたいと思ったが、これまでとは難易度があきらかに違った。
とにかく新しいことは未知の世界だから、知らないことがあまりにも多すぎる。それを教えてくれる人がいなければ、自分で答えを探すしかない。これはグルグルと迷路の中をさまようようなものだった。
ところが、ネットで調べても、ぼくが欲しかった情報がなかなか見つからないのだ。どうやらこの世界は、DAWソフトについての知識が豊富な人たちが集まっていて、こんな素人おじさんの疑問などごく常識のことかもしれん。
でも、きっとぼくのような初心者もいるはずだし、この経験が役に立つかもしれないと思ったので、『ピアノ音源「グルグル迷路 奮闘記」』と題して書くことにした。
さあ、この先どうなることでしょうかねえ?
さて、今やろうとしているのは、最終的にがぼくが選んだこの「SYNCHRON FAZIOLI F308」を使えるようにすることだ。ピアノ音源の経験はすでに「Addictive Keys」で経験済みなので不安はない。(と、この時は思っていたのだが。。。)
さっそく購入サイトにいくと、たまたまセール中で22%引きで購入することができた。なんだかぼくを祝福してくれてるような気分だ。よ〜し、これで、ぼくのピアノライフはより充実したものになるのだ! と意気揚々のスタートだった。
ところが、普通のソフトならただダウンロードしてシリアルナンバーを入れて、インストールすればすぐに使えるけど、これはそんなことはない。いきなりの壁にぶちあたる。
インストールに12時間もかかってしまった
いや、その前に最初の壁があった。それは外付けSSDにインストールするのに時間がかかったことだ。午前11時頃に始めてからいつまでたっても終わらない。ようやく終わったのがなんと夜の11時頃だった。インストールになんと12時間もかかったのだ。
外付けSSDを使った理由は、データ容量が約187GBという強烈なデカさなので、とてもじゃないがぼくのMacBook Proにはこれをインストールするスペースがないからだ。
後でわかるんだけど、これだけ時間がかかったのは、SSDのスピードが480MB/秒というものだからだ。ただインストールは1回だけだからとこのときは気にもとめなかった。
そして次に立ちはだかった壁があった。先程書いたように、このソフトはインストールして、シリアルナンバーを入れれば使えるというわけではない。
iLokというアクティベーション(認証)するライセンスマネージャーで、アクティベイトして初めて使えるようになるのだ。
つまり、iLokでこのソフトを使用するパソコンを特定することで、不正コピーや不正使用を防いでいるのだ。すごいな。
でも感心してはいられない。これがおじさんには大きな壁だったのだ。とにかく全くどうしていいのか分からなくて苦労した。
そもそも解説をみても、その単語の意味さえわからないのだ。とはいえなんとか難関突破!(この情報はネットにたくさんあるので、あえてここには書かないで先に進もう)
なぬ?ライブラリ読み込み時間が「18分」やと?
ようやく迷路から抜け出すまで、かなり時間がかかったが、これで一安心。……と思ったのもつかの間、まだ迷路から脱出できていなかった。またもや次の問題が起こった。
それは起動してから、音源のライブラリを読み込まないと音が出せないのだ。しかもこの読み込みになんと18分もかかったんだよ。こりゃ長すぎる。
ちょっと待ってよ。毎回立ち上げ時にこんなに時間がかかとったら、使い物にならへんとちゃうんかい? おかしいやないか?(なぜか関西弁になってきた) …と思いながらも、とにかく先へ進もう。
今度は音飛び問題の発生
ようやく音をだすことができたので、さっそく演奏をしてみた。するとすぐにCPU Meterが赤くなって音切れ、音飛びが頻繁に発生してしまって、音がブツブツに途切れてしまう。これじゃ演奏なんかできへん。CPUの負荷は全く問題ないのになんでやねん。
これらのことを解決するためにネットで調べたんだけど、どこにもそのヒントでさえ見つからない。そこでテクニカルサポートに問い合わせメールを送った。以下の2つだ。
質問1:SynchronFazioli F308を起動すると、ライブラリーの読み込み時間が20分近くかかってしまうんや。どなんしたらええねん?
その回答:外部ストレージをM.2 SSDなどのより高速なストレージへのアップグレードするとええで。
質問2:演奏すると頻繁に音飛びが発生してしまうんや。解決法はあるんかい?
その回答:こちらもストレージのスピードに影響されるんや。また「プリロードサイズ」を大きくする方法を教えるさかいやってみてや。
もちろん関西弁は使ってないけどね。笑
要約して短く書いたけど、どの質問にもとても丁寧にわかりやすく答えてくれて、この会社のフォロー体制の素晴らしさにありがたく感じた。最近は事務的な返事をする所が多くなったなと感じていたからだ。
まずは質問2の音飛び問題は、アドバイスの通り「プリロードサイズ」を3072からMaxの32768に変更してみた。すると全く音飛びがなくなった。よしこれで解決!
そして次はストレージの高速化
ちなみにぼくが持っている外付けSSDは2TBでスピードが480MB/秒だった。そこでネットで高速のものを探したが、Mac用は1050MB/秒以上のものは使えないという。
これだと読み込み時間は単純計算で20分から半分の10分くらいになるのか? いやたぶんそれ以上に早くなるのだろうが、実際に使ってみないとわからない。
WindowsならM.2 SSDの高速SSDボードを購入して差し込めば解決できるが、Macはこれをケースに入れて自作するなど面倒だしうまくいく自信がない。
結局ポータブルSSDではせいぜい1050MB/秒しかないということか。これだとせっかく購入しても無駄遣いになるだけという可能性もある。さあどうしようか困ったぞ。
そもそもぼくが疑問に思っている、「ライブラリの読み込み時間とSSDのスピード」について書いてあるサイトを見つけられない。ってことはこの「SYNCHRON FAZIOLI F308」が読み込むライブラリが12GB(99054samples)とデカすぎるからだろうか?
やっぱMacBook Proの中にインストールするしかないか
ちなみに、ぼくの持っているMacBook ProのSSDのスピードを調べると、なんと5797MB/秒という爆速のものらしい。しかも後継機のM2より早いというのには驚いた。
なるほどね!いろいろ考えた末、1050MB/秒のポータブルSSDを買ったとしても、満足した結果が得られない可能性があるのなら、これ以上ないという方法をとろう。つまりMacBook Proの中にインストールすることに決めたのだ!
今のストレージを調べたら512GBで残りは94GBしかない。このソフトは187GBだからぜんぜん足りない。そこで写真や音楽その他大きなデータを外付けSSDに移動させ、不要なデータを削除して容量を確保することにした。
非情なくらい徹底的に領域確保に徹した結果、281GBを確保することができた。ソフトで187GB使っても残りが94GBある。これならなんとか使えるかもしれない。もうこのMacはDAW専用パソコンにしてもいいかもしれん。
ちなみにぼくはMacBook Proを世代はさかのぼるけど、あと2台もっていて普通に使うにはストレスは感じない。むしろPhotoShopやFireworks等を使えるので一世代前のMacの方が役に立っているくらいだ。(これらは今のMacBook Proでは使えなくてしまった)
Macが使いやすい理由の一つは「AirDrop」といって、BluetoothとWi-Fiを経由して簡単にデータをやりとりできることだ。もちろんiPhoneやiPadともやりとりができるから、なくてはならないツールになっている。
例えばこのブログの写真はiPhoneで写真を撮って、このMacBook ProにAirDropで送り、プレビューアプリで画像処理や文字入れをしてアップする。PhotoShopでの加工が必要なら、前のMacBook ProにAirDropで送り加工しアップするという具合だ。
さあ、ソフトを再インストールしよう!
さあ、領域を確保できたので再インストールしよう。外付けSSDを外して、ソフトのダウンロード元であるVienna Assistantをみると「Repair」となっている。これを押すと新たなダウンロード先を指定し、そこにインストールできるようになる。
ところが突然 Vienna Assistantが固まってしまって動かなくなってしまう。仕方がないのでMacを再起動してから再トライするがまた失敗した。このサーバーはきっとなんかおかしくなっとるぞ!
そこでテクニカルサポートに問い合わせメールを送った。しかしぜんぜん返事がこないのだ。休みなのかなあ? あ〜困ったなあ。このままじゃ、迷路から出られないぢゃないか。どうすればいいのだ!?
素人考えで単純にデータを移行させたとして、アクティベイトが切れてしまったら元も子もない。さあ困ったぞ。
おちつけ 自分!
そこで冷静になってしばらくすると「おちつけ」の掛け軸が目に入った。
よしここは落ち着いていこうぜ、そう思ってもう一度『「Vienna Assistant」日本語操作ガイド』を見直すと、今あるデータを他へ移動させる「Move」という機能があることがわかったのだ。よしさっそくこれを実行させてみよう。
おお、今度はちゃんと動き始めたぞ、外付けSSDからMacへデータ移行が始まったのだ。これで無事データが移行できればいいのだが。
それぞれのフォルダーを見ながらデータが移動していくのを確認していると、約1時間半ほどでデータがすべて移動できた。
ところがVienna Assistantのほうは、91%のままで固まったままになってしまったのだ。あ〜あ、またか。やっぱこのサーバーはおかしいぞ。
とりあえずこ恐る恐るソフトを起動させることにした。するとちゃんと立ち上がったぞ。どうやらデータの移行がうまくいったようだ。(ただし、まだ信用してないけどね)
そしてソフトが立ち上がると、ライブラリーの読み込みが始まった。その時間はなんとたったの「約10秒」で完了!
今まで20分近くかかっていたのに、たったの10秒で終わったのだ。さすがMacが爆速なだけある。これでやっと迷路から脱出できたのだ。これまでの苦労のことを思うと涙が出そうだった。
そしてさっそく音を確かめてみた。おお〜、なんという素晴らしい音だこと。まさしくこれがぼくが求めていた音なのだよ。やったぜ〜〜!
どれだけ音が違うのか比較して聴いてもらおう。
フリーの音楽の素材屋さんからみんなが良く知っている「エリーゼのために」のMIDIデータをダウンロードして、これを3つの音源で聴き比べてみよう。念のため、それぞれの音源は一切のエフェクトを使わず音の調整はしていない。
音の調整をすることでより音質が良くなるが、とりあえずはプリセットそのままの音を使っているので、ご了承ください。
① Presence Grand Piano
まず最初はStudio One Artistにある「Presence Grand Piano」から聴いてみよう。エフェクトなど一切使っていないので、これらを使えばもっと音質はよくなると思うけどなんかチープな音だよね。
② Addictive Keys Studio Grand
そして最初に買った有料ピアノ音源「Addictive Keys Studio Grand」(12,840円)で聴いてみよう。さすがに人気の高い有料音源なので、そこそこ良い音だよね。でもぼくはこれでも不満だったから、他のを探したのだ。
③ SYNCHRON FAZIOLI F308
そしてこれが「SYNCHRON FAZIOLI F308」(43,340円 → セール価格33,660円)の音になる。音の調整を行うともっとよくなるけど、とりあえずの比較で細やかな音、そして音の広がりを感じてもらいたい。
音の調整なく単純比較なんだけど、この音源の素晴らしさがわかってもらえたら嬉しい。
さらにJodan Rudessさんが弾いている動画を観てほしい。これがピアノ音源で作られた音とは思えないくらい、本物のピアノのような音がするよねえ。
というわけで、長くなったけどこれにて『ピアノ音源「グルグル迷路 奮闘記」』は終了となった。これほどまで苦労するとは思わなかったねえ。
この音源を見つけてから、実際に使えるようになるまで、次々と現れる大きな壁にぶちあたって、その迷路から抜け出すのに、どうしていいかわからず何度も挫折しかけた。
でもどんな困難も諦めなければ、必ずなんとかなるものだ。学生時代に大きな悩みを抱えたときに読んだD.カーネギーの「道は開ける」を思い出した。
さあ、これから新しい音源を使って、いっぱい練習するぞ〜〜! と思ったが、おじさんは正直いってそーとー疲れたので、しばらく休養をとります。