休日は時間があればアマチュア無線を楽しんでいる。
とはいえ、このところのコンディションは、7MHz、10MHz、14MHz、18MHz、21MHz、24MHz、28MHz、どのバンドも最低状態だ。ぼくのメインはCW(モールス交信)なんだが、どのバンドをワッチしても、ほとんどというより全く聞こえてこない。コンディションが悪いときに有利なCWでもだめだ。
わずかにローバンドの7MHzで少し聞こえてくるくらいだろうか。それでも信号は非常に弱い状態だ。これは太陽の黒点の影響だったり、気象の影響だったり、いろいろな原因があるのだが、とにかくひたすらワッチするしかないんだよね。
そんな中、唯一JT65だけは最悪のコンディションの中でも時々聞こえてくるのだ。JT65という通信方式は月面反射通信の技術で、ごく微弱な電波を遠くに飛ばすというデジタル技術なんだよね。なので、普通に聞いても殆ど聞こえない信号でも交信できる優れものなわけだ。
このJT65は我が家の環境では、21MHzのバンドだけが比較的よいのだ。とはいえ周期的に良いときと悪いときがあるので、その僅かなタイミングで交信できるときがある。これはまるで釣りをやっている時と同じ感じかもしれない。
のんびり、竿先をみながら他のことをする。ま、これも悪くはないよ。そんな中、昨日と今日交信できた局は唯一ロシアと中国の局だった。
今、ニュースでは外交問題において、ロシアや中国とは難しい関係にあるのは知っている。そういうニュースをみると、こういう国々の印象はあまりよくないのだが、アマチュア無線の世界では違う。お互いにわかっているのだ。確かに政治的にはいろいろ問題はあるかもしれない。でも、世界は政治だけがすべてではないということだ。
アマチュア無線の世界は政治とは切り離して楽しもう! みんなそう思っているのだ。いわゆる「趣味の世界には国境はない」と言われる。
でもアマチュア無線の世界では国境を常に意識している。このアマチュア無線局はどこの国か。そしてこの局長さんはどんな所に住んでいるのか。どんな人なんだろう。そういうことを意識している。というのはデジタルが発達している今では、例えばJT65の場合、すぐに冒頭の写真のように地図上にプロットされる。
さらに、アマチュア無線家はアワードなどを常に意識しているので、どの国のどの地域の局と交信したのかは重要なことだからだ。ぼくはアワードを追いかけることはないのだけどね。
さらにはQRZ.comというサイトではコールサインを検索すると、その局長さんのデータが公開されているから、いろんなことも瞬時にわかるのだ。これはアマチュア無線ならではのことなのだよね。
こういうことは、例えばTwitterやFacebookなどのSNSでできない交流だ。
「ハローCQ、私はJA2WIGです。どなたか私と交信してくれませんか?」
と電波で発信する。するとリアルタイムで、
「JA2WIGさん、私は○○○です。交信してください」
ということが、電波で地球上のあちこちでやりとりされる。インターネット回線ではない。
そのリアルタイムでつながっている人同士が、まさに国境を感じながら、国境を越えて交流するわけだ。正直言って、大げさに言うと、みんな地道な外交をしている。そんな意識を持っているような気がしている。
こうして、たまたま偶然に繋がっているぼくたち。
でも、ぼくたちはここに来るまで簡単ではなかったよね。
だってさ、アマチュア無線の免許を取ることだって、あんなに難しい無線工学や法規の勉強をして、やっとの思いで国家試験に合格したよね(今は簡単かもしれないけど)。さらには無線設備やアンテナを揃えるのも大変だったよね。それに、いろんな難しいソフトウェアの勉強をしたよね。CWだって覚えるのが本当に大変で苦労の連続だったよね。
そういういろんなことを乗り越えて、今ここでたまたま偶然の出会いがあるんだよね。でも、お互いそういうことを乗り越えてここまで来た同士なんだよね。わかってるよ。わかってる。だから、今日の出会いを大切にしようね。
少なくともぼくはそういう想いを持ちながら、世界中の人たち、それがロシアの人でも、中国の人でも、韓国の人でも、分け隔てなく、交流を楽しみたいと思っている。たかがアマチュア無線という趣味なのかもしれない。でも、世界中で何百万人ものアマチュア無線家がこうして毎日毎日ずっと交流し続けているのだ。それはたかが、とは言える規模のことではないと思うのだが? どうだろう。そういう世界があるということをぜひ知って欲しいのだ。